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2015年02月26日 「第32回庭野平和賞」 WOWWⅠ会長 エスター・アビミク・イバンガ師(ナイジェリア)に 女性の特性を生かし、紛争解決に献身 社会的弱者の権利擁護などに尽力

「第32回庭野平和賞」の受賞者が、ナイジェリアのキリスト教ペンテコステ派(プロテスタント系)の牧師でWOWWI(Women Without Walls Initiative=障壁なき女性たちのイニシアチブ)会長のエスター・アビミク・イバンガ師(53)に決定しました。公益財団法人・庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)が2月24日、京都市内で開いた記者発表会の席上、庭野理事長により発表されました。イバンガ師は2010年、ナイジェリア・プラトー州で女性と子供に対する殺りく行為の撲滅を目指し、WOWWIを創設。同国内を中心に、紛争状態にあるコミュニティー間の対話と調停、女性への職業訓練や社会的弱者の権利擁護などに尽力してきました。贈呈式は5月14日、東京・港区の国際文化会館で行われます。


拉致された少女らの解放を求め、集会で演説するイバンガ師(写真提供・庭野平和財団)

庭野平和賞は宗教的精神に基づいて宗教協力を推進し、世界平和実現に向け顕著な功績を残した個人・団体に贈られます。今回、125カ国、約600人の学識者、宗教者らの推薦を経て、庭野平和賞委員会(シェイク・イブラヒム・モグラ委員長=英国ムスリム評議会副事務総長。宗教協力や平和活動に取り組む世界の11人の宗教者、識者らで構成)で厳正な審査を行い、受賞者を決定しました。
イバンガ師は1961年、ナイジェリア・ナサラワ州で生まれました。アフマド・ベロ大学を卒業後、ジョス大学で経営学の修士号を取得。ナイジェリア中央銀行に16年間勤務し、本店国際局課長補佐、支店業務部長などを務めました。またこの間、「ジョス国際キリスト教伝道会」を設立。主席牧師として地域社会の貧困者や恵まれない人々への奉仕、青年や夫を亡くした女性、孤児への支援、講演活動などを行いました。

ナイジェリアは1960年に英国から独立後、イスラームを信仰する北部民族とキリスト教を信仰する南部民族が対立し、激しい紛争が繰り広げられてきました。2010年には、ムスリムが同国プラトー州のジョス近郊にあるキリスト教徒の村を襲撃し、500人以上を殺害。多くの女性や子供が犠牲となりました。
同師は、こうした長年続く紛争や暴動、悪質な事件により、社会的弱者が殺害されている状況を危惧(きぐ)。女性や子供に対する殺りく行為の撲滅を目指すとともに、女性が持つ創造性や非暴力の精神などによる紛争解決を目的に2010年、WOWWIを設立しました。以来、宗教や民族、社会階級といった違いを超えた女性による連合体として、ナイジェリア国内を中心に、平和構築に向けた女性の職業訓練や社会的弱者の権利擁護、国内避難民や貧困者への援助、紛争状態にあるコミュニティー間の対話・調停活動などを行ってきました。
イバンガ師はまた、畜産や農耕、建設業務などの経営を通して、社会や経済の発展にも寄与しています。

庭野平和賞委員会は、イバンガ師のこれまでの功績を高く評価し、今回の受賞を決定しました。5月14日の贈呈式では、庭野名誉会長から正賞の賞状、副賞として顕彰メダル、賞金2千万円が贈られ、同氏による記念講演が行われます。
なお、受賞者の発表はイタリア・ローマでも行われ、各メディアにより報道されました。

第32回庭野平和賞受賞者メッセージ  多様性や違いは神の恩恵 手を携えて平和に貢献

高名な庭野平和賞の受賞者に選ばれた栄誉に対し、謙虚に、そして名誉な心で深く感謝の意を表したいと思います。平和構築と宗教対話に向けたささやかな貢献を評価して頂いたことに、胸の震える思いがしました。
18年間、ナイジェリアのジョスで牧師を務めたあと、宗教や部族の異なるナイジェリアの優れた女性グループと共に、母親の声を母国の平和構築プロセスに反映させる活動を続けてきました。
私は、宗教や民族の違いを誰も気にすることのない、温かく平和な社会で育ちました。違いは私たちに力をもたらし、多様性の美をさらに豊かにするものでした。
しかし、特にこの10年間、ジョスや中部ベルト地域、東北部で起きた民族や宗教の違いを原因とする暴動により、私が育った理想の社会は、目の前で崩れ去りました。ある宗教や部族に属しているというだけで、数千もの人々が殺されたのです。罪なき人々を殺害することは許されません。それは胸の張り裂ける出来事です。
違いにとらわれず、すべての人間を愛すること。それが牧師としての私の務めです。「障壁なき女性たちのイニシアチブ」はすべての女性に対し、宗教、民族、社会階級の違いを超え、共に手をとり平和な社会に向けて貢献しようと呼びかける一つのビジョンです。
庭野平和財団の偉大なイニシアチブに対し、心から賛意を表します。庭野平和賞は私たち受賞者にさらなる努力を求め、世界平和に向けてどんなに小さなことでも、すべての人に意義ある貢献をするよう呼びかけています。
すべての創造主である神は、私たちが次元の異なるさまざまな智慧(ちえ)を発揮できるように、一人ひとりに違いを与えてくれました。それは神の恩恵であり、美の現れです。
私は、母親としての声を発する機会を与えてくださったことに、そして牧師としてコミュニティーの内外に向けて平和を提唱していく機会を頂いたことに、さらに深い感謝の念を抱いています。
地球の平和と人々の協力に貢献するために働き続けることを固く誓います。皆さま、誠にありがとうございます。皆さまに神のご加護がありますように。

障壁なき女性たちのイニシアチブ会長
エスター・アビミク・イバンガ

(2015年2月27日記載)