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2016年08月02日 第2セッション 核軍縮に向けた宗教者の役割

第2セッションでは、非政府の組織や学界、市民団体、宗教者など6人が発題した。


軍縮に取り組む宗教者や国会議員、研究者、市民ら約140人が集い、核兵器廃絶に向けた具体的な行動を話し合った

原水爆禁止広島県協議会代表委員を務める秋葉忠利前広島市長は、今年5月のオバマ米大統領の広島訪問を各国のマスコミが大きく報道したことにより、核兵器の廃絶への支持が高まったと指摘した。特に米国では、日本への原爆投下の正当性を支持する国民が長く多数を占めてきたが、今年の調査では原爆使用が正しかったと答えた人の割合が初めて50%以下に減少したことを紹介。「オバマ大統領が広島を訪れ、原爆の道義的責任を語ったことで、アメリカ人の核兵器に対する意識が変わり、やがて外交政策も変わっていく」と語った。
続いて核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)東アジアコーディネーターの梅林宏道・ピースデポ特別顧問が、ラテンアメリカや東南アジアなど5地帯で発効されている「非核兵器地帯条約」に言及。域内での核兵器の開発や実験、配備、使用などの禁止に加え、核保有国が核を持たない国や地域に対し、核兵器による攻撃の威嚇の禁止も定めており、延べ約120カ国が加盟していると報告した。その上で、こうした条約づくりを進め、実質的に核兵器を使用できなくする取り組みの重要性を説明。さらに、米国・ロシア・中国という核保有国に囲まれた北東アジアでも、非核兵器地帯の実現が可能との見解を示した。

一方、パグウォッシュ会議前国際評議員で、明治学院大学国際平和研究所の高原孝生所長は、核廃絶に向けて宗教者が果たす役割に触れ、「(核の悲惨さを)心に届く、魂に届くような言葉で人々に語って頂きたい」と要請した。また、核兵器だけでなく、あらゆる兵器の軍縮についても課題を詳述。仮に核兵器が全廃されたとしても、それに代わる新たな兵器の開発の可能性はなくならないとし、全ての武器を廃絶し、戦争をなくしていく大切さを述べた。
次いでNGOの立場から、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員を務めるピースボートの川崎哲共同代表が発題した。現在、核兵器を禁止する条約の交渉開始に多くの国が賛同する中、唯一の被爆国である日本が賛同していない状況を解説。大きな要因として、日本が米国の「核の傘」の下にあることを挙げ、「禁止に賛同し、全廃を訴えるグループに入るよう、働きかけていきたい」と話した。
この後、宗教者を代表し、WCRP/RfP日本委核兵器禁止条約タスクフォース運営委員の三宅善信・金光教泉尾教会総長とアルベルト・クワトルッチ聖エジディオ共同体事務局長がそれぞれ発題。三宅師は、宗教者が軍縮のために、平和の心を伝えていく必要性を訴えた。
またクワトルッチ師は、昨年8月に広島で原爆投下70年シンポジウム「二度と戦争を起こさない——核兵器廃絶をめざして」(主催・WCRP/RfP日本委、同共同体、世界連邦日本宗教委員会)が開催されたことを紹介。宗教者には、対話、協力に尽くして戦争の回避に努める責務があるとし、「私たちは神のしもべとして人類の公益のために努力していく必要があります。広島や長崎に核爆弾が投下された事実を風化させることなく、核兵器の廃絶にベストを尽くしていきたい」と話した。

(2016年8月25日記載)