本会中央学術研究所が加盟する教団付置研究所懇話会「生命倫理部会」の第16回研究会が12月7日、東京・港区にある浄土宗総合研究所(明照会館内)で行われた。9研究所から25人が参加。中央学術研究所から学術研究室の藤田浩一郎室長ら3人が出席した。
当日は、浄土宗総合研究所の今岡達雄副所長が『遺伝子診断の倫理的問題点』と題し発表に立った。この中で、生命科学技術の進歩により、感染症の確定診断を行う病原体の遺伝子検査、治療のためのがん細胞の遺伝子検査などが広く行われていることを紹介した。さらに、ヒトゲノムDNAの解析を経て、将来の病気の発症を予想する「発症前診断」、次世代への遺伝子異常の伝達などを判断する「保因者診断」、胎児に対する「出生前診断」といった遺伝子診断の技術について説明した。
その上で、遺伝子診断固有の倫理的問題点を列挙。遺伝子情報は、血縁関係にある親族にも共有され、被検者本人だけでなく、血縁者の遺伝病や遺伝子変異による将来的な疾病の発症確率が分かるため、「知りたくないという権利」の保障の確立を強調した。また、治療法のない遺伝子疾患が見つかる場合も少なくなく、診断を行うか否かの問題、さらに「医療から遺伝子ビジネスへ」の流れが進み、診断が野放しになる危険性を指摘した。
こうした現状に対し、今岡氏は「生命科学の分野では、『治療』目的であれば、それは何物にも代え難いものであるから、どのような方法を用いてもいいという流れにある。しかし、いのちの尊厳からしてどうなのか。いのちとは与えられるものであり、人間がつくったり、操作したりするものではないという考えとは逆行する方向に動いている」と語り、危惧を表した。
この後、天理大学おやさと研究所の金子昭教授が発表のコメントを行った。
(2016年12月15日記載)
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