新宗連(新日本宗教団体連合会)政治委員会の拡大政治学習会が10月9日、東京・代々木の新宗連会館で行われ、同政治委員会のメンバーや、新宗連加盟教団関係者など約30人が参加しました。岩島久夫・聖学院大学大学院客員教授が『「有事法制」の問題点』をテーマに講演しました。
他国からの武力攻撃事態に対処する法整備を目的とした「有事関連3法案」は、先の通常国会で立法化が検討されました。同国会では審議未了となりましたが、来年1月の通常国会でも引き続き継続審議される予定で、現在も国民の大きな関心事となっています。今年7月には、福田康夫官房長官が衆議院武力攻撃事態特別委員会で、「(他国による武力攻撃事態に対処するため、合理的な範囲と判断される限りにおいて)思想、良心、信仰の自由が制約を受けることはありうる」と発言し、宗教界に波紋を広げました。
今回の学習会は、こうした有事法制を取り巻く状況を踏まえ、宗教者として有事法制に関する正しい理解を深めるためのもの。新宗連として初めての学習会となります。
冒頭、新宗連政治委員会の新井三知夫委員長(救世真教会長)があいさつし、「有事法制は宗教者として避けられない重大な問題です。しっかりと学習、議論を重ねて、対応を考えていきたい」と述べました。
続いて、防衛庁防衛研究所所員として実際に有事立法の研究に携わった経歴を持つ岩島氏が講演しました。
この中で岩島氏は、有事法制研究は1977年、当時の米ソ対立を背景に旧ソ連の軍事的脅威を対象として始まったものであるとし、現在日本に有事が発生する可能性は極めて低く、立法化の根拠があいまいであると指摘まし。また、政府が立法化にあたり、有事のシナリオよりも日米関係といった「思惑」を先行させていることに疑問を呈するとともに、憲法の枠内で法制化を目指していることに触れ、「有事法制という重大な法整備は、憲法の〝すき間〟を縫って行うべきものではありません。もしやるのであれば、憲法改正も視野に入れ、広く国民を巻き込んで正々堂々と議論するべきではないでしょうか」と述べ、法制化には慎重な議論が必要であることを強調しました。
このあと質疑応答が行われ、参加者から「日米安保条約も踏まえた議論が必要」「有事法制が立法化されれば徴兵制が敷かれるのではないか」「宗教者として武力ではなくあくまで平和的解決を目指す努力が大切」といった意見が出されました。
(2002.10.16記載)
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