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2002年12月14日 東京佼成ウインドオーケストラがアメリカで公演

東京佼成ウインドオーケストラ(金森弘安団長)一行65人は、12月14日から22日まで「アメリカ演奏旅行」を行いました。同団の海外ツアーは5回目。今回の公演は、毎年シカゴで開催される世界最大の吹奏楽イベント「ミッドウエスト・クリニック」の招待を受けて実現しました。

第56回「ミッドウエスト・クリニック」は12月17日から5日間、シカゴ市内のホテル、ヒルトンシカゴで開かれ、30以上の国から吹奏楽指導者など1万3000人が参加。北米から選抜された30団体が演奏を繰り広げました。同クリニックの中で、最も注目を集めたのが東京佼成ウインドオーケストラの演奏でした。
18日夕、ヒルトンシカゴのインターナショナル・ボールルームは2700人の聴衆で超満員となりました。常任指揮者ダグラス・ボストック氏指揮によるK・ヘスケス作曲『マスク』で同オーケストラのコンサートがスタート。4曲目に、桂冠指揮者フレデリック・フェネル氏が登場しました。
現在88歳のフェネル氏は1984年に常任指揮者に就任し、同オーケストラを名実ともに世界のトップレベルに引き上げました。昨年4月に体調を崩し入院。6月から、この日に向けてリハビリに励んできました。
フェネル氏の選曲は、アメリカ人作曲家V・パーシケティの名作『ディヴェルティメント』。団員たちはフェネル氏の指揮に応え、感謝の思いを込めて同氏の母国アメリカで最高の演奏を披露しました。
続いて行われた2回目のコンサートも超満員。団員たちが選んだアンコール最後の曲はフェネル氏お気に入りの『ヒズ・オナー』。同氏のタクトで、軽快なアメリカン・マーチが奏でられました。演奏が終わると同時に聴衆は総立ちとなり、盛大な拍手が3分間鳴り止みませんでした。
19日には、「テューバ・クリスマス」(フィリップス・ハービー財団主催)の催しが同市内のホテル、パーマーハウスヒルトンで行われ、テューバとユーフォニアム愛好家335人が集いました。
同オーケストラはフェネル氏の指揮で『そりすべり』『ヒズ・オナー』を演奏。また、参加者と『ジングルベル』などのクリスマス曲を合奏し、ホテルを訪れた市民600人を楽しませました。
今回のツアーで、団員たちは世界最高水準の演奏をアメリカの聴衆に披露しました。それは、世界の舞台に同オーケストラを導いた名匠フェネル氏への恩返しの演奏でもありました。

東京佼成ウインドオーケストラ(シカゴ公演)斎藤好司氏寄稿

『東京佼成ウインドオーケストラ アメリカ演奏旅行とフェネル氏の業績』

音楽評論家 斎藤好司

2002年12月17日から21日まで、アメリカ・シカゴで第56回ミッドウエスト・クリニック(全米音楽関係見本市)が開催された。18日、ヒルトンホテルのホールで行われた演奏会に、常任指揮者ダグラス・ボストック氏率いる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO=金森弘安団長)がメーンバンドとして出演し、大成功を納めた。
TKWOにとって初のアメリカ公演となった今回、聴衆の中にはイギリス王立北大学のチモティ・レイニッシュ元教授やアメリカのデニス・ジョンソン氏(WASBE・世界吹奏楽指導者協会会長)、アルフレッド・リード氏(作曲家)なども顔をそろえ、TKWOが持てる技術水準の高さを絶賛していた。アジアからは台湾の葉樹涵氏(APBDA・アジア吹奏楽指導者協会元会長)、韓国の李尚哲氏(国際管楽祭委員長)などがクリニックに参加しており、会場は国際的な盛り上がりを見せていた。
TKWO桂冠指揮者のフレデリック・フェネル氏は、イーストマン音楽学校を辞し、1984年から18年間にわたりTKWOの常任指揮者として、このバンドを育ててきた。89年、オランダ・ケルクラードでの演奏旅行をはじめ、バンドの海外公演に尽力。96年には桂冠指揮者の称号を贈られた。母国アメリカでは、97年に民間人として初めてマリン・バンド(アメリカ合衆国海兵隊バンド)を指揮するなど、その指導力と影響力は不動の評価を得ている。
そして今回、彼の指揮によりパーシケッティ作曲『ディベルティメント』が演奏されるや、その活き活きとしたサウンドは聴衆を魅了した。アンコールに奏でられたフィルモア作曲『ヒズ・オナー』まで、満場の大喝采は鳴り止まなかった。翌19日はパーマーハウスで、全米バリ・テューバ協会とTKWOの共催により、チャリティーのクリスマスコンサートが開かれた。フェネル氏指揮の『ジングルベル』はじめお馴染みのクリスマスソングは全米6局でテレビ放映され、大きな反響を呼んだ。サンタクロースの衣装で400人の演奏者たちを指揮する彼の表情は、80歳を超えてなお若々しい喜びにあふれていた。
近年、国際化が進む中で民族、宗教、国家思想の違いなどから、対立や紛争が多発している。こうした時代にこそ、音楽をはじめとする文化芸術を通して相互理解を深め、感動を分かち合うことが必要となってくるだろう。東京佼成ウインドオーケストラ、そしてフェネル氏の活躍には、平和という意味においても大きな期待が寄せられていると言えよう。

(2003.01.31記載)