(c)日本国際ボランティアセンター
イラク戦争に際し、「立正佼成会一食平和基金」が緊急援助を行った2団体が、同国の復興に向けた活動を展開しています。日本国際ボランティアセンター(JVC)は、1991年の湾岸戦争後から、国連の経済制裁によって厳しい生活を強いられてきたイラクの人々を対象にプロジェクトを推進しており、今後も復興支援にあたる予定です。また、復興支援のニーズを探るため、4月20日から、イラク、ヨルダン両国を訪れていた「特定非営利活動法人JEN」の調査隊がこのほど帰国。学校施設の再興に着手しています。
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【JVC】
イラクで活動している日本国際ボランティアセンター(JVC)のスタッフがこのほど一時帰国し、活動報告を行いました。12年前の湾岸戦争をきっかけに、イラク、ヨルダン両国で活動を展開している同団体では、これまでのプロジェクトをさらに推進すると共に、今後も現地のニーズに沿って活動を展開していく意向です。
JVCは1991年の湾岸戦争後、国連の経済制裁によって厳しい生活を強いられてきたイラクの人々を対象に、①医療支援②ストリートチルドレン支援③ヨルダンにおけるイラク難民支援、の3つのプロジェクトを進めてきました。5月8日、東京・豊島区の生活産業プラザで行われた報告会の中でJVCスタッフは、今回の戦争によって状況が悪化していることを強調。当面、この3つのプロジェクトを継続していくことを発表しました。
スタッフの報告によると、4月3日、JVCが支援する赤新月社の母子保健病院が周辺への空爆により、窓ガラスが飛散するなどの被害を受けました。イラクでは戦時中も一日約2000人の子供が誕生しましたが、連日の空爆で妊婦の精神状態が悪化。早産や流産で、命を落とす乳児もいました。
首都バグダッドでは連日、略奪行為が繰り返され、国立病院なども被害を受けています。そうした状況下にあった4月16日、JVCスタッフはバグダッド入り。フランスやドイツのNGO(非政府機関)と協力し、母子保健病院や診療所などに、医薬品や医療機器の支援を行いました。
さらに、湾岸戦争後から増え続けているストリートチルドレンの栄養状態が、今回の戦争で一層悪化していることから、JVCは他団体と協力し、貧困地域や孤児院で暮らす子供に、食糧を提供しています。
JVCスタッフは報告会の中で「医薬品や食糧が不足している中で、人々は生きる希望を失わず、復興に向けて意欲を見せている」と参加者に訴えました。
今後のプロジェクトについて、同団体の熊岡路矢代表理事は「戦争終結後の状況は水や食糧、薬などライフラインが途絶え深刻化しています。皆様から頂いた浄財を有効に活用するため、今後も現地のニーズを見極め、他団体と協力して支援活動を進めていきたい」と語りました。
【JEN】
イラク戦争後の同国民に対する支援のあり方を探るため、4月20日から、イラク、ヨルダン両国を訪れていた「特定非営利活動法人JEN」の調査隊がこのほど帰国しました。木山啓子JEN事務局長、JENカブール(アフガニスタン)事務所調整員による現地調査に、本会外務部スタッフが同行。約3週間にわたって復興支援のニーズを探りました。JENは今回の調査を踏まえ、学校再開のためのプロジェクトを開始する予定です。
4月20日に日本を出発した一行は、ヨルダンの首都アンマンとイラクの首都バグダッドを訪れ、すでに現地で活動を進めている支援団体や、宗教団体を訪問。イラク戦争後の市民生活について聴き取りを行いました。木山事務局長の報告によると、戦闘が終結したものの、バグダッド市内では依然、建物に侵入し、家財道具などを略奪、さらに建物を放火するなどの事件が相次いでいます。その中で、5月2日には学校再開の動きも見られました。「学校再開といっても、とても手放しで喜べる状態ではありません。略奪を受けて窓ガラスが割れ、、不発弾が残る教室で、生徒たちはフセイン政権当時の教科書を使って授業を受けています。トイレも汚く、子供たちは近所の家のトイレを借りながら学校生活を続けているのです。1日も早く子供たちが安全に教育を受けられる環境を整えたい」(木山事務局長)。
こうした状況を受け、JENは学校施設の修繕や設備の改善に取り組む計画に着手。現在、事務所立ち上げの準備を進めています。また、経済制裁により栄養状態の悪化が進むストリートチルドレンの支援も行う予定です。
JENは過去、旧ユーゴスラビアやモンゴル、アフガニスタンなどで、現地政府との調整や国連機関とのパートナーシップを図りながらプロジェクトを遂行してきました。しかし、今回の場合は、戦争によって無政府状態となった上、国連がイラク復興に直接的にかかわっていないことから、現地の状況や支援のニーズを把握する手段が絶たれ、調査が難航しました。また、インフラ(社会基盤)の破壊により、通信も機能しなかったといいます。
JENでは、衛星電話を購入し、連絡業務を行いました。その一方で、治安の悪化に伴う外出規制を予測し、現地で支援活動にかかわる団体が多く利用する宿泊施設に滞在して情報収集に努めました。
今回の調査には、本会一食平和基金から200万円が支援されました。木山事務局長は、「現地政府や国連機関が機能していない上、治安が悪化しているイラクでの調査を安全に、スムーズに行えたのも、調査費を支援して頂いたおかげです。市民が本当に必要とする支援を行うためには、何よりも事前の調査が重要になります。一食平和基金から緊急支援を頂いたことに深く感謝しています」と語っています。
(2003.05.30記載)