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2003年10月28日 京都で第6回日本・中国・韓国仏教友好交流会議日本大会開催

日本・中国・韓国の仏教徒が法縁を深め、世界平和に向けた役割を確認し合う「第6回日本・中国・韓国仏教友好交流会議日本大会」(主催=日中韓国際仏教交流協議会)が10月28、29の両日、京都市東山区の清水寺、本会京都教会などを会場に開かれました。本大会のテーマは『仏教と平和――日常生活と仏の戒』。3カ国の僧侶や信徒、在家仏教徒ら約300人が「世界平和祈願供養」「学術講演会」に参加し、世界平和に貢献する仏教徒の具体的な行動指針を導き出しました。本会からは庭野日鑛会長、松原通雄外務部長、滝瀬惠一・京都教会長が出席しました。

今大会のテーマは『仏教と平和――日常生活と仏の戒』と定められました。テロや紛争が各地で繰り返されるこの時に、すべてのいのちを生かす仏教の「戒律」を日常生活に当てはめ、全人類の指針として世に提示することをねらいとしています。

29日、秋晴れの京都に日中韓の"法友"が結集しました。一同は午前10時から清水寺本堂で「世界平和祈願法要」を奉修しました。初めに森清範・清水寺貫主を導師に日本の儀礼による法要が営まれ、日本の仏教徒が般若心経を読誦、香華を手向けたあと、森貫主が表白文を奏上しました。続いて中国、韓国の代表者がそれぞれ読経供養、「平和祈願メッセージ」を読み上げました。法要後、松原外務部長が参加者に呼びかけ、全員で「一食を捧げる運動」に協力。当日の昼食を抜き、浄財をユニセフに献金しました。

このあと一同は『世界に平和を!』と書かれた横断幕を先頭に、清水寺から本会京都教会までの約3キロを「平和行進」。先触れの法螺貝が鳴り響く中、清水坂から円山公園、知恩院前を練り歩き、市民や観光客に世界恒久平和をアピールしました。

午後からは、同教会で『仏教と平和――日常生活と仏の戒』をテーマに「学術講演会」を開催し、各国代表3人が基調発言、8人が補充発言を行ないました。基調発言では、まず日中韓国際仏教交流協議会理事長の小林隆彰・比叡山延暦寺学問所所長が、「仏教を信じ、自らの生活を律し、他のために尽くすことこそが仏教徒の本来の面目」と述べた上で、日本の僧侶や在家仏教教団の信者による社会浄化活動や世界の諸問題への取り組みを紹介しました。続いて登壇した中国の聖輝・中国佛教協会副会長は、仏教があらゆる戦争を否定し、人類の平等と非暴力を説く宗教であると指摘。「人々から貪・瞋・痴の心を取り除き、布施、慈悲、智慧の心を持った人に転化させる役割が仏の戒にある」と語り、三国の仏教徒が世界平和に向け率先して取り組むことを提唱しました。韓国からは淨印・中央僧伽大学校仏教学科教授が講演。淨印師は不殺生戒について「仏教徒だけのものではなく、生きとし生けるすべてのいのちを等しく尊重する教えでなければならない」と語り、不殺生戒の実践を強調しました。

引き続き、今大会の成果を踏まえた「共同宣言」が採択され、各国代表者が調印に臨みました。宣言文では、平和世界が人類共通の願いであること、その一方で他者への不寛容が紛争の渦中に存在することが示唆されました。こうした現状を前に「殺すな、盗むな、嘘をつくな」といった戒律を規範として、仏教徒が「いのちを守る、布施をする、真実を語る」生き方を積極的に進めることを、一同は誓い合いました。

なお、28日には三国間の実務機関である「三国仏教友好交流委員会」が開かれ、同委員会を来年、中国・北京で開催することが確認されました。

※メモ <日本・中国・韓国仏教友好交流会議>

1993年、京都で開催された中国佛教教会設立40周年を記念した「日中仏教友好交流記念大会」の席上、趙樸初・中国佛教協会会長(当時)が「三国仏教界に"黄金の絆"を構築しよう」と提案しました。これを受け、三国の仏教者が一同に会し、世界平和に向けた仏教徒の果たすべき使命と行動を確認する場として、1995年に第1回大会が北京で開催されました。その後、大会は韓国(96年・ソウル)、日本(97年・京都、奈良)でも行なわれ、以降は各国の仏教者が輪番で同大会の開催・運営に携わってきました。
実務者レベルでは連絡会議や交流委員会が開かれ、具体的な行動について意見交換が行なわれています。特に第1回大会で庭野日鑛会長が提唱した三国共通『仏教根本聖典』の編纂は、日中韓国際仏教交流協議会(日本)の依頼を受けた本会が全面的に協力して完成させ、三国の友好交流事業として成果を修めました。このほか各国宗派での修行体験、留学生による弁論大会も、交流事業の一環として行なわれています。

第6回日中韓仏教友好交流会議から

第6回日中韓仏教交流会議での各仏教者の発言からいくつかを紹介します。

「お釈迦さまは、戦争が起こりそうになると必ずそこに駆けつけ、人々に平和の大切さを説き、争いを仲裁したといわれています。お釈迦さまがどれほど平和を愛していたかを物語る逸話だと思います。平和は一人ひとりの心から始まります。静かに目を閉じて、心の奥に潜む三毒を鎮め、戦争による不幸と、平和がもたらす幸福に思いをはせてみましょう。私たちがなぜお互いに寛大で、慈悲深くなければいけないのかを悟ることができるはずです。その悟りこそ、人類が平和と幸福に向かう第一歩なのです」
(法長・韓国仏教宗団協議会会長。「世界平和祈願法要」での平和祈願メッセージ)

「仏教の具体的な実践の中でも特に平和に寄与するのは、相手にやさしい言葉をかける『愛語』だと思います。愛語は、相手の心を癒し、穏やかにするところに真の目的があります。道元禅師も、「怨敵を降伏し、君子を和睦ならしむること愛語を基本とするなり」と説き、愛語には「廻天(天子の考えを変える)」の力があると断言しています。争い合う人々にまず必要なのは愛語による対話なのです」
(中井真孝・佛教大学学長。「学術講演会」補充発言)

「仏教にはさまざまな戒律がありますが、その精神を要約すると『諸悪莫作』『衆善奉行』『自浄其意』ということに尽きると思います。悪事をなさず、善行を重ねることで自分の心を清めていく。すべての人々がこうした生き方をする限り、決して社会が乱されることはありません。仏教の戒律は悟りに達するための規範であると同時に、平和な社会をつくるための有力な方法でもあるのです。人類は今、仏教による精神的な導きを切に求めています。私たち仏教徒は自らの実践を通して、戒律に込められた平和の精神を積極的に示していく必要があると思います」
(観蔵・九華山仏学院講師=中国。「学術講演会」補充発言)

(2003.11.07記載)