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2005年11月30日 日宗連が第2回「宗教と生命倫理シンポジウム」開催

日宗連(財団法人日本宗教連盟)主催による第2回「宗教と生命倫理シンポジウム」が11月30日、東京・中央区の築地本願寺第二伝道会館で開催されました。日宗連に協賛する5団体(教派神道連合会、財団法人全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、財団法人新日本宗教団体連合会)などから約150人が参集しました。本会からは中央学術研究所の今井克昌所長がパネリストとして参加したほか、関係者が出席しました。

日宗連では臓器移植法案審議中の平成9年5月、参議院の全会派と臓器移植特別委員会のメンバーらに「意見書」を提出し、宗教界の意見を聴取した上で、十分に審議するよう要請しました。1カ月後、「脳死を人の死」とする臓器移植法が成立。同法の施行から8年が経過した今日でも、脳死の判定、本人の意思確認などでさまざまな議論が展開されています。こうした中、国会では同法改正の動きも見られます。
日宗連では脳死・臓器移植が人の人生観、死生観にかかわる問題でありながら、国民的議論を重ねていない現状を憂慮。人の生と死に多くの問題を投げかけていることから『いま、臓器移植法改正問題を考える』をテーマに「宗教と生命倫理シンポジウム」を開きました。同シンポジウムは今年2月に次いで2回目の開催です。
当日は、小松美彦・東京海洋大学教授、青木清・上智大学名誉教授、今岡達雄・浄土宗総合研究所専任研究員、斉藤泰・大本教学研鑽所研鑽室長、竹内弘道・曹洞宗総合研究センター宗学研究部門主任研究員、今井所長をパネリストに、パネルディスカッションが行われました。島薗進・東京大学教授(日宗連理事)がコーディネーターを務めました。パネリストは生命倫理学、宗教学、宗教者などの立場から意見を述べました。
小松教授は、脳死者から臓器を摘出するVTRを上映したあと、「摘出には麻酔や筋弛緩剤を投与している」と指摘し、脳死者約1万2000人中175人が1週間以上生存している事例を挙げ、脳死を人の死として臓器移植を行うことに異論を唱えました。青木教授は臓器提供者の意思の尊重や遺族への配慮などを条件に、カトリック信徒の立場からローマ教皇ヨハネ・パウロ二世が回勅『いのちの福音』に記した「臓器移植は愛の行為」を支持し、移植を肯定しました。
一方、今岡研究員は脳死を一律に人の死とすることを否認した上で、臓器移植について「臓器を利用可能な資源とする風潮を助長するもの」と述べ、反対しました。また、斉藤室長は「脳死を死と見なすことは生命軽視、倫理観の崩壊、人心の荒廃をもたらす」と語り、臓器移植法の見直しを訴えた。禅宗の立場から意見を述べた竹内研究員は、現行法と改正案のそれぞれの問題点を指摘したあと、脳死を一律に人の死と定めた改正案に言及。「臓器の商品化、臓器市場の創出につながる」と危惧の念を示しました。
今井所長は本会が今年3月11日に自民党の「脳死・生命倫理及び臓器移植調査会」と民主党の仙谷由人・政策調査会長(当時)に提出した『臓器移植法改正案に対する提言』を紹介し、「脳死を一律に人の死と規定し、臓器移植を推進しようとすることに賛成できない」「人の死は心拍停止・呼吸停止・瞳孔散大の三兆候を持って判断する」「脳死判定、臓器提供は本人の意思表示を必須条件とする」という本会の見解を発表しました。さらに、「臓器移植法を改正することで、日本をどんな国にしていきたいのか、どういう方向に持っていくのかということを互いに検討することが大事」とコメントを結びました。

(2005.12.09記載)