News Archive

2006年08月29日 WCRP世界大会:『京都宣言』を発表し閉幕

『平和のために集う諸宗教――あらゆる暴力をのり超え、共にすべてのいのちを守るために』をテーマに8月26日から京都市の国立京都国際会館で開催されていた第8回WCRP(世界宗教者平和会議)世界大会が29日に閉幕しました。大会では、全体会議、研究部会を中心に討議が重ねられ、最終日に『京都宣言』を採択。宗教者による紛争解決への取り組み、諸宗教評議会(IRC)の設立とWCRPネットワークの構築、各界や他の機関とのパートナーシップなど、現在、WCRP国際委員会の推進する方向性が強く打ち出された大会となりました。大会には世界約100カ国から800人の宗教指導者を含む約2000人が集いました。本会から、庭野日鑛会長(WCRP日本委員会理事長)、庭野光祥次代会長はじめ5人の正式代表が参加。オブザーバー、スタッフ、ボランティアとして多数の会員が大会に加わりました。

大会では、戦争、貧困、人権侵害、性差別、疾病、環境破壊など暴力のあらゆる形態を分析しながら、現状の課題とそれを乗り越えるための方策が討議されました。全体会議では、約20人の発題者が、それぞれ意見を発表し、取り組みなどを紹介。研究部会で「紛争解決」「平和構築」「持続可能な開発」のそれぞれのテーマに分かれて討議を重ねました。「青年世界大会」「女性会議」で出された意見も発表されました。
さらに、「紛争解決」部会では「紛争調停・交渉」「和解と癒し」「紛争予防」、「平和構築」部会は「武器拡散、軍縮、安全保障」「暫定的公正と人権」「平和教育」、「持続可能な開発」部会は「子どもとHIV/エイズ」「貧困撲滅」「環境」の作業部会に分かれ、個別のテーマに対して深く意見を交換し合いました。研究部会での話し合いのまとめは、最終日の全体会議Ⅴで発表されました。
また、今大会で各国のIRCは、前大会の33から増え、70を数えました。会期中には、国や地域のIRCの事例をもとに諸宗教ネットワークの強化などについて意見を交換し合う「ネットワーク構築会合」が行われました。さらに、ネットワークによる具体的行動を目指した「実務向上会合」では、「女性宗教者ネットワークの確立と強化」「諸宗教紛争和解モデル」など9テーマに分かれてワークショップを実施。今後、草の根、国家、地域レベルでのIRCの設立とネットワークの一層の充実が志向されます。

紛争を抱える地域からも多数の宗教者が参加しました。公式な会合とは別に、紛争当事国の宗教者が具体的な和解プロセスなどを協議しあう非公式な会合も開催されました。内戦状態の続くスリランカの宗教者の会合には、明石康・日本政府スリランカ問題担当特別代表も出席。北東アジアの安全保障をテーマに、政府レベルと同じ枠組みでの「6カ国宗教者間対話」(仮称・北朝鮮=朝鮮民主主義人民共和国=を除く)も行われました。この他、イラク、スーダン、中東、イスラエル・パレスチナなど紛争地域ごとに宗教者が会合を持ち、紛争解決に向けた宗教者の役割などについて意見を交換しました。
WCRPと他の国際組織、機関との連携もテーマとなりました。アン・ヴェネマン・ユニセフ事務局長は、「青年世界大会」「女性会議」に引き続き、本大会にも参加し、基調発題を行いました。全体会議では、ユニセフとWCRPが共同でまとめた「子供に対する暴力を乗り越えるための宗教コミットメント宣言文」も採択されました。また、大会の討議の中で、貧困の解消、教育の普及、男女平等、疾病の克服などに期限を設けて取り組む、国連の「ミレニアム開発目標」が大きく取り上げられ、WCRP国際委員会が協力して作成したツールキットが紹介されました。大会には、コフィ・アナン国連事務総長からもメッセージが寄せられ、WCRPと国連のパートナーシップが一層強く打ち出されました。世界銀行からもキャサリン・マーシャル総裁付カウンセラーが出席し、基調発題を行い、開発に対する宗教者の役割に期待を寄せました。このほか、企業や経営者などとのパートナーシップ構築に向けた会合なども行われました。
29日の閉会式では、ウィリアム・ベンドレイWCRP国際委員会事務総長が第8回WCRP世界大会『京都宣言』を発表。宗教が暴力を正当化せず、暴力を拒絶し、和解と癒しをもたらすために、諸宗教協力を促進することが急務であるとし、「共にいのちを守る」ためには「共有される安全保障」という概念が不可欠だと指摘。宗教者としての具体的な行動計画も盛り込まれました。このあと、宣言文が未来を担う子どもたちに手渡されました。
引き続き、大会受入事務局の宮本けいし事務局長(妙智會教団理事長)が「この大会がWCRPにとって平和への道を再確認し、新たな出発となることを切に祈りつつ、すべての皆さまに感謝申し上げます」と謝辞を述べました。
ステージには、大会受入ボランティアのメンバーも招き上げられました。延べ約2300人のボランティアが大会を陰から支えました。会場の参加者からは、感謝を込めて、大きな拍手が青年たちに送られました。
なお、44社260人のマスコミ関係者が大会を取材。大会の模様は連日、テレビ、新聞などを通じて大きく報道されました。

▲     ▼

大会の席上、庭野会長がWCRP国際委員会会長、同管理委員に再選されました。新役員は、WCRP国際委の大会指名委員会が地域、宗教などを考慮して検討。正式代表者会議で承認されました。日本からは、渡邊惠進・天台座主が同国際委名誉会長に、矢田部正巳・神社本庁総長が同国際委会長(管理委員)に選出されました。また、WCRP国際女性調整委員会副委員長として、泉田佳子・本会元責任役員も管理委員を務めます。
今回、管理委員の数は40人から50人に増えました。国際委事務総長にはウィリアム・ベンドレイ氏が再任されました。年内に、新管理委員の中から10人の執行委員が選出される予定です。


(2006.09.08記載)