日本・中国・韓国の仏教徒が法縁を深め、世界平和実現に向けて意識と行動を確認し合う「第9回日本・中国・韓国仏教友好交流会議日本大会」(主催=日中韓国際仏教交流協議会)が10月25、26の両日、本会京都教会と奈良市の法相宗大本山・薬師寺を会場に開催されました。『人類の共生をめざして~宗教間対話における三国仏教の役割』のテーマのもと、3カ国の仏教徒ら約300人が参加。本会からは庭野日鑛会長はじめ、川端健之外務部長らが出席しました。発表された宣言文では、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による核実験問題も触れられ、対話による平和的解決を国際社会に要請しました。
10月26日、京都教会で行われた「三国仏教講演会」では冒頭、同協議会副会長である庭野会長があいさつ。この中で、庭野日敬開祖が諸宗教者による交流、対話の場の建設を願い、普門館を備えた京都教会がつくられたことに触れ、「開祖の願っておられたことが、こうして実現しているということをしみじみと感ずる次第であります」と述べて今大会の参加者に謝意を表しました。
続いて各国の代表3人が基調講演、9人が補充発言を行いました。それぞれ代表者は、三国仏教徒による交流、対話の意義を踏まえ、さらに世界規模で活動を推進していく必要性を強調しました。
午後からは、薬師寺の玄奘三蔵院で「世界平和祈願法要」を奉修しました。同協議会副理事長の安田暎胤・薬師寺管主を導師に日本の仏教徒が『般若心経』を読誦。安田管主が表白文を奏上しました。続いて中国、韓国それぞれの読経供養が行われ、代表者が「平和祈願文」を読み上げました。
法要後、今大会の成果を踏まえた「共同宣言文」が各国語で読み上げられました。宣言文では、他者との対立、紛争、戦争の根本原因は、釈尊が説く貪・瞋・痴の「三毒」に代表される人間の利己主義にあると指摘。その上で三国仏教徒が慈悲と寛容による「共生」の精神を示し、世界平和に寄与していくことが確認されました。
また、宣言文は北朝鮮の核実験問題にも触れ、三国仏教徒が「仏陀の智慧をもって、協議と対話の方法でこの問題を平和的に解決することを切に願う」と表明しました。
なお、25日には同会議の実務機関である「日中韓仏教友好交流委員会」による準備会議が開かれました。席上、次回大会の開催国を中国とする計画が発表されたほか、来年は同交流会議の提案者である故趙樸初・中国佛教協会会長の生誕100年を迎えることが紹介されました。
日中韓三国仏教遊興交流会議日本大会 「三国仏教講演会」要旨
10月25、26日に行われた「第9回日本・中国・韓国仏教友好交流会議日本大会」の2日目、本会京都教会で『人類の共生をめざして~宗教間対話における三国仏教の役割』をテーマに講演会が行われました。その中から、基調講演の要旨を紹介します。
【日本代表】
■中村康隆・日中韓国際仏教交流協議会会長、浄土門主(大野玄妙・聖徳宗総本山法隆寺管長代読)
釈尊は、80歳でお亡くなりになる前に、弟子たちに「自らを燈火とし、我が教えである法を燈火とせよ」と諭された。「仏法僧」の三宝を常に心の支えとして「明るく・正しく・仲良く」共に生きてゆくようにと。
200年以上前に起こったフランス革命では、自由・平等・博愛という3つの思想が示された。釈尊のお示しになった法と、博愛の精神の実現が戦争をなくし、人々に共生の生活をもたらすことだろう。世界中の宗教、とりわけ日中韓三国の仏教者が和合共生博愛のみ教えを基本理念とされることを切に願う。
【中国代表】
■学誠・中国佛教教会副会長兼秘書長
当今の世界はグローバル化し、ネットワークの発展は繁栄をもたらしたが、各種の競い合いや戦争が停止したためしはなく、世界は非常に不太平である。
衝突を無くし、世界の太平を享受するには、対抗を対話に変えなければならない。慈悲、智慧、平等、和合を特徴とする仏教は、各種の衝突が頻繁に発生する世界において重大な役割を発揮すべきである。中韓日三国の仏教は同じ流れを汲み、各自の発展過程で相互交流し、「黄金の絆」の関係を形成し、人類文明の発展に貢献した。私たちは、今後も世界の広範な問題に対処し、対話と交流を深め、人類の共生に心力を捧げる。
【韓国代表】
■志源・韓国佛教宗團協議会常任理事
仏教は、縁起の真理を説いた宗教である。縁起とは、自他が必然的に違うことを理解すること、違うという立場から、人を理解して受け入れることを志す。
韓国仏教の代表的な高僧、新羅時代の元曉大師(がんぎょうだいし)は、中国仏教との交流を形成し、日本仏教に多くの影響を与えた。互いに矛盾しているような多くの伝統の教えの長所をよく生かし、不要な思想的争いを鎮めた。これが「和諍思想(わじょうしそう)」である。
他の宗教と対話する時は、まず相手の立場をよく聞いて理解しようとする努力が必要だ。人類の共生の世界を成すために「和諍思想」を実践することが、人類の和合と世界の平和へ向かう解答である。
(2006.11.02記載)