自殺者の増加が深刻な社会問題となる中、新宗連(新日本宗教団体連合会)は自殺のない社会を目指し、「自殺防止プロジェクト」を進めています。今年度は『あなたにもできる自殺防止活動』をテーマに、全国の総支部が学習会を計画。4月22日、そのスタートとなる奥羽総支部の学習会が青森県八戸市で開かれました。プロジェクトの内容を紹介します。
「自殺者のほとんどは、誰にも何も言えずに死んでいかれます」--奥羽総支部の学習会で講演した東京自殺防止センター創設者の西原由記子氏は、約80人の参加者にそう語りかけました。
同センターは、自殺願望を持つ人に対し電話相談や面接相談などを行っています。講演で西原氏は、自分の存在価値が否定されたり、生きていても仕方ないと思った時、人は自殺を決断してしまうと指摘。「相談とは『聴く』ことです。アドバイスするのではなく、相手の心の叫びを無条件、無批判に受け入れ、共感することが大切」と述べました。
また、「死にたくて死ぬ人はいません。必ず生きたいという気持ちがある。人と人とのつながりを感じられた時、人は絶対に死なない。相手に寄り添うことが自殺を防ぐ大きな力になるのです」と語り、宗教者の役割にも期待を寄せました。
新宗連では、自殺の増加を、いのちを尊ぶ宗教団体が共に取り組むべき大きな課題と受け止め、積極的に対応を進めています。一昨年、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」に協力する形で「自殺総合対策推進に向けての署名活動」を展開。昨年度、自殺防止活動を重点事業の一つに位置づけ、企画委員会内に「自殺防止プロジェクト」を設置、プロジェクト会議や学習会などを重ねてきました。
今年5月12日に行われた同委員会と同プロジェクトによる学習会では、『宗教者と精神保健--自殺問題を介した宗教者と精神医学の連携を考える』と題し、小俣和一郎・上野メンタルクリニック院長が講演しました。小俣氏は、「宗教と精神保健は、人間の内面的問題を扱う点で共通性がある」と指摘した上で、うつ病患者やその家族とかかわる人たちが精神科医などの専門家と連携を図り、相互に支援を行う「スーパーヴィジョン」の方法を紹介。宗教者と精神科医の連携の重要性にも言及しました。
また、「宗教者はいかに生きるかを説くだけでなく、自殺の否定をドグマ(教義)として論理的に説く必要がある」と指摘。これを受け、参加者は自殺問題に対する教団の取り組みについて意見を交わしました。
新宗連では今年度、自殺防止の活動を全国に広げ、各総支部で学習会を実施します。西原氏を講師に現在8総支部12会場で予定されており、参加者は自殺に追い詰められた人の心情や、自殺を防ぐかかわり方などを学びます。
(2008.05.30記載)
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