中央学術研究所が加盟する教団付置研究所懇話会の生命倫理研究部会は11月29日、福岡市の九州大学医学部百年記念講堂で開催された「日本生命倫理学会第20回年次大会」の中でシンポジウムを行いました。テーマは『医療現場での宗教者の存在とその言説の有効性』。同研究所の浦崎雅代委託研究員がパネリストとして参加しました。
近年、緩和ケアなど終末期の医療現場で宗教者が患者や患者家族と向き合い、精神的なケアにあたる取り組みが広がりを見せています。同シンポジウムでは、各宗教宗派の教えに即したケアの現状に加え、特定の宗教や宗派によらない、患者の精神的な支えとしての「スピリチュアルケア」に焦点を当て、宗教者ならではのケアのあり方について議論を交わしました。
浦崎氏のほか、NCC(日本キリスト教協議会)から浜本京子・日本バプテスト病院牧師、浄土宗総合研究所から佐藤雅彦・大正大学非常勤講師、大本教学研鑽所から加藤眞三・慶應義塾大学医学部教授が発題者として登壇。当日は金子昭・天理大学おやさと研究所教授がオーガナイザーを務めました。
『佼成病院緩和ケア・ビハーラ病棟--スピリチュアルケアワーカーのメンバーとしての活動より』と題し発表した浦崎氏は、同病棟のスピリチュアルケアワーカー(心の相談員)の養成課程や活動の内容を解説しました。ご本尊が安置されている病院の多目的室での患者との触れ合いを例に挙げながら、本会の教えを押し付けるのではなく、病棟内に宗教的雰囲気をつくり出すことで、患者にスピリチュアルなものを感じ取ってもらうことの重要性を強調。「さりげなく、患者さんに寄り添うことで、スピリチュアルペイン(精神的苦痛)を表に出せる空間をつくり出すことがスピリチュアルケアワーカーの大切な役割です」と述べました。
発題者は、それぞれに取り組みを紹介しながら、患者のスピリチュアルケアへのニーズが高まっている現状を報告。医療従事者に対する宗教者のケアの必要性にも言及し、医療現場で宗教者と医療従事者が協力する大切さを強調しました。
(2008.12.5記載)
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