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2009年05月07日 第26回庭野平和賞贈呈式

庭野平和財団(庭野日鑛総裁、庭野欽司郎理事長)の「第26回庭野平和賞贈呈式」が5月7日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われました。今回の受賞者はウガンダの聖公会牧師であるギデオン・バグマ・ビャムギシャ参事司祭(49)です。1991年に自らがHIV(エイズウイルス)陽性者である事実を知り、翌年、それを公表しました。以来、HIV/エイズの問題に取り組み、予防と適切な治療を困難にしている陽性者への差別や人権侵害を明らかにするとともに、病に対する意識の向上やケアの確立に貢献してきました。なお、新型インフルエンザの世界的流行が懸念されたため、ビャムギシャ師の来日は急きょ、取りやめとなりました。贈呈式では、約100人の宗教者、識者が見守る中、庭野総裁から正賞として賞状、副賞として顕彰メダルと賞金2000万円(目録)がビャムギシャ参事司祭の代理である植松誠・日本聖公会首座主教に手渡されました。 

ビャムギシャ師は1959年、ウガンダで生まれました。高校の教師を経て、神学を学び、ウガンダ聖公会の牧師となりました。91年、自身のHIV感染を知ります。社会ではHIVに対する無理解から病気への恐怖や偏見が強かったにもかかわらず、個人的な苦しみを多くの人々に勇気と希望を与える社会的メッセージに転換することを決意。翌年、陽性者であることを公表しました。
HIVの世界規模での流行は病気とともに生きる3300万人だけでなく、家族や地域社会、国家に多大な苦悩をもたらしています。
とりわけ、陽性者は病苦に加え、人々の不正確な認識によって差別を受け、苦しんできました。従来、「節制」「貞節」「コンドーム」を強調した教育や対策が進められ、一定の成果は認められたものの、不適切なメッセージによって陽性者は「淫(みだ)らな行いをした者」という汚名を着せられ、"失敗者"の烙印(らくいん)を押される事態も起きました。差別を恐れ、検査や治療を受けない人も増加。HIV対策の最大の障壁は「感染を恥辱と考え、沈黙すること」と言われるゆえんでもあります。
問題の深刻さと多重の苦しみを抱える人々を目にした同師は、正確な知識の普及、差別や偏見の解消に尽力。各国政府や企業の雇用者などに精力的に働きかけてきました。安全な営みのためには節制、貞節、コンドームだけでなく、「母子感染予防」「安全な血液や注射」などが不可欠と主張。「治療や栄養摂取の重要性」「名誉を傷つけないカウンセリングや検査の実施」「地域社会のエンパワーメント」「他の感染症の予防と対策」などの推進を提示しました。
99年、01年、06年の国連総会特別総会での演説をはじめ、40カ国以上で講演。貧困の解消にも触れ、すべての人が予防と治療を手に入れることができる公正な世界の実現などを訴えてきました。また、差別や偏見の背景には、不正確な知識に基づく一部の宗教者の言動も少なからず指摘されており、啓発活動に努めました。
01年には活動が評価され、ウガンダ・ナミレンベ教区の聖パウロ大聖堂から高位聖職である「参事司祭」の称号が授与されました。現在はウガンダとザンビアの2聖堂の司祭を務めています。
これまでにHIVに対する教会のリーダー育成と会員のトレーニングを実施する「ケアリー大僧正地域リソースセンター」、エイズ孤児など支援を必要とする子供たちの教育や健康を促進し、指導者を養成する「ギデオン参事司祭支援者財団」を設立しました。02年には諸宗教者と連携して偏見をなくし、各宗教共同体により良い変革をもたらす「ANERELA+(HIV/エイズと共に生きる、あるいは自らも罹患(りかん)者である宗教指導者のアフリカネットワーク)」を創設。アフリカ23カ国のすべての宗教から1700人以上がメンバーとなり、国家レベルの啓発運動や政策立案などを推進しています。
贈呈式では、庭野平和賞委員会のグナール・スタルセット委員長=ノルウェー国教会オスロ名誉主教=による「選考経過報告」を庭野理事長が代読したあと、庭野総裁からビャムギシャ師の代理を務めた日本聖公会の植松首座主教に賞状と顕彰メダル、賞金2000万円(目録)が手渡されました。
続いて、庭野総裁があいさつ。塩谷立文部科学大臣(銭谷眞美事務次官代読)、ウガンダのワッスワ・ロッキー・ビリッグワ駐日大使、日本宗教連盟の岡野聖法理事長=新日本宗教団体連合会理事長=が祝辞を述べ、ビャムギシャ師の信仰に基づく勇気と行動力に敬意を表しました。
このあと、ビャムギシャ師のメッセージを植松首座主教が読み上げました。

(2009.5.15記載)