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2009年06月12日 「佼成福祉の基本理念」発表

このほど、教務局(社会貢献グループ)より「佼成福祉の基本理念」が発表されました。また、これに併せて「超高齢社会における今後10年間の社会福祉の取り組み」が示されました。これは「超高齢社会」などの社会情勢と布教現場のニーズを踏まえた上で、本部と各教会が共通の理念を認識し、布教の推進にあたって社会福祉資源を活用し、物心一如の救済を図っていくことをねらいとしたものです。社会貢献グループが庭野日敬開祖、庭野日鑛会長の法話を依りどころとし、これまでの立正佼成会の福祉の取り組みを精査してまとめ、理事会により承認されました。概要とともに沼田雄司教務局長のメッセージを紹介します。  

【基本理念構築の背景】
 総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が21%を超えた社会は「超高齢社会」と定義されます。日本は平成19年1月の時点でこの数値を超え、世界に先駆けて「超高齢社会」に突入しました。年金、医療、介護、相続、夫婦、家族、教育など、社会福祉の領域は拡大し、国民の大半が社会福祉に深くかかわり、あるいは関心を持ちながら暮らしています。その中で、各教会で展開される布教伝道に寄与し、多くの会員が救われる手だての一つとして、社会福祉を生かしていくことが求められています。
社会貢献グループでは、このような社会情勢と布教現場の現状と課題、要請などをリサーチし、教えをもとに各教会が持ち味を生かして社会福祉活動を推進し、本部がそれを効果的にサポートすることを目的に「佼成福祉の基本理念」を策定しました。教会を中心として、本会が行う福祉の方向性、枠組みが明確に示されました。

【本会の社会福祉への取り組みの経緯】
「人を救い、世を立て直す」という庭野開祖の精神に基づき、仏教を生活に生かすことにより、人を救済し、平和に貢献することを目的に本会は創立されました。草創期より「貧・病・争」に代表される個人の苦に対して仏教の法門により解決を与え、人間らしい尊厳ある生き方へと導く「法座」を中心に布教、活動が展開されました。昭和40年代には社会貢献の重要性が一層認識され、宗教協力、明るい社会づくり運動など社会的、国際的な平和活動にも取り組むようになりました。
法座を中心とした信仰活動の中に社会性を持った相談、課題が増加し、庭野開祖は教会幹部の人間救済力を充実させることを目的に社会科学を導入。昭和47年には人材育成の一環として「社会福祉講座」が開始され、26年間で約3000人が受講しました。そこでの学びは布教現場で活用されました。その後、平成11年に各教会に社会福祉専門担当者が設置され、その育成のために「社会福祉専門担当者教育」が実施されました。各教会では福祉相談、友愛訪問、社会福祉学習会・講演会、ボランティア活動なども行われています。
また、本会は、昭和20年代以降、今日までさまざまな社会福祉事業を行っており、佼成育子園、佼成病院、妙松苑、各種研究所、佼成病院扶友センターなどを通して、社会貢献を志してきました。
教団では平成9年3月、教団基本構想『一人ひとりの心田を耕す佼成会』が示され、それを基に「高齢社会への取り組み」をプロジェクトとして推進。平成17年に教務部に福祉開発グループが設置され、平成21年次、組織改変によりその業務が教務局社会貢献グループに移管されました。

【基本理念と今後10年間の取り組み】
基本理念は、仏教と社会福祉の共通点である人間主義(ヒューマニズム)を念頭に置き、法華三部経と庭野開祖、庭野会長の法話の内容に即して、4項目が掲げられました。
また、高齢者、児童、障がい者ら幅広い社会福祉の各分野の重要性を認識した上で、昨今の社会状況を踏まえ、布教現場の現状に応えるため、今後10年間は「高齢会員の救護(くご)」に重点を置いて人材育成を中心とした活動に取り組んでいくことが示されました。具体的な取り組みに関しては、各教会の布教方針や地域性を尊重。本部の活動項目と教会の活動の手引、参考例なども提示されました。

〈佼成福祉の基本理念〉
●仏性を礼拝し、心田を耕す菩薩道としての福祉
●物心一如の智慧と自他一体の慈悲による福祉
●いのちを尊び、個性を大切にする福祉
●安らぎと希望を与える福祉

〈超高齢社会における今後10年間の社会福祉の取り組み〉
1. すべての高齢会員を長年にわたって修行されてきた人生と信仰の先輩として敬い、出会いを大切にしてまいります。
2. 高齢会員一人ひとりが生涯に渡り、み教えをもとに菩薩行が継続でき、生きがいと希望が持てることを目指します。
3. 高齢会員を取り巻く各階層が、共に支え合い、安心して信仰活動ができるサンガづくりを目指します。
4. 「斉家」をめざし、高齢会員とその家族の救済を推進いたします。
5. 社会福祉専門担当者および福祉活動に携わる方々が、高齢会員とのふれあいを通し、自らの心田を耕し、自己の人格向上を図るための信仰活動を支援いたします。

沼田教務局長コメント
私たちが生活する社会の情勢を見たとき、実際に社会福祉のサービスや制度を活用しなければ直面する生活課題を具体的に解決できないことが多々あります。特に日本は長寿社会になり、介護保険制度に代表されるようにさまざまな行政サービスが整備され、充実してまいりました。
こうした背景の中、各教会においては社会福祉の制度やサービスに関する情報を提供・活用し、布教ラインのサポートをしていくお役として社会福祉専門担当者がおられ、ご活躍頂いております。その一方で、社会福祉が包含する領域は多岐にわたるために活動も多様化し、どのように取り組んでいけばよいのか、その目安となるものを求めている専門担当者の方もおられます。
そこで、これらのご要望にお応えし、教会の皆さまが福祉を通して信者さんの救護に取り組んで頂けるよう、このたび「佼成福祉の基本理念」および「超高齢社会における今後10年間の社会福祉の取り組み」を策定いたしました。この基本理念と今後10年間の取り組みは、各教会でさまざまに取り組まれている活動の方向性を示すとともに、本部と教会が共通理解を持って信者さんの救護に取り組んでいくことを明確にさせて頂きました。
また、ここで示した方向性とは、幅広く社会福祉の活動を普及していくということではなく、会員の皆さまが安心して布教活動のできる、その一助となることを願いとしています。すなわち社会福祉を縁として自らの心田を耕し、仏さまの教えにひれ伏し、仏さまの教えをお伝えしていく私たちになるということです。
今後は、この基本理念と10年間の取り組みが、信者さんの救護に寄与できるよう皆さまとともに協力して取り組んでまいりたいと思います。

(2009.6.12記載)