「第23回世界宗教者平和のための祈りの集い」(聖エジディオ共同体主催)が9月6日から8日まで、ポーランド・クラクフ市で開催され、約40カ国から正式代表として約300人の諸宗教者が参加しました。テーマは『第二次世界大戦から70年--対話する諸宗教と諸文化』。立正佼成会からは、庭野光祥次代会長が庭野統弘学林学監心得とともに出席、赤川惠一総務局外務グループ次長が随行しました。光祥次代会長は『経済危機における人類の精神的追求』をテーマにした分科会で、パネリストの一人としてスピーチを行いました。
「祈りの集い」はカトリックの在家運動体である聖エジディオ共同体(本部・ローマ、「第16回庭野平和賞」受賞団体)の主催によるものです。1986年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世の呼びかけでイタリア・アッシジ市で開催された「世界平和祈願日」集会の精神を継承しようと、翌年から毎年、ヨーロッパを中心としたさまざまな都市で開催されてきました。アッシジでの集会には、庭野会長が出席。「祈りの集い」にも、本会は毎年代表を派遣しています。今年は、ドイツ・ナチス軍のポーランド侵攻により第二次大戦が開戦してから70年の節目を迎えたことから、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所での追悼式典がプログラムに組まれました。また、クラクフはヨハネ・パウロ二世の出身地に近く、教皇就任前に同司教区の大司教を務めていたことから、その遺徳を追憶する場面が多くみられました。
日本からは、杉谷義純・天台宗宗機顧問、濱中光礼・同宗務総長、中山善司・天理教真柱、飯降政彦・同表統領はじめ、臨済宗、神社本庁、大本、WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会などからの代表約30人が参加しました。
6日、開会式に先立ち、同市内の「神の慈悲教会」でカトリック・ミサが催されました。この中で聖エジディオ共同体のマルコ・インパリアッツォ会長があいさつ。ローマ教皇ベネディクト十六世がイタリア・ビテルボ市からのライブ中継で、第二次大戦でのポーランド、ホロコーストなどでの惨禍に触れ、「諸宗教は、人間自身の侮辱に繋(つな)がる人間の神との関係を消却してしまう暴力、人種差別、全体主義、過激主義に対抗するため、ゆるしと和解を促進しなければならない」とメッセージを寄せました。
市内のオーディトリアム・マキシマムでの開会式では、第1部でスタニスラフ・ジヴィッツ・クラクフ大司教(カトリック枢機卿)、ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外務大臣、アンドレア・リカルディ・聖エジディオ共同体創設者、ミシェル・カムドシュ・フランス銀行名誉総裁=元IMF(国際通貨基金)専務理事=らが登壇。第2部では、ジョゼ・マヌエル・バローゾ・欧州委員会委員長の基調発題に続き、ルクセンブルクのアンリ大公、フィリップ・ブヤノビッチ・モンテネグロ大統領、デビッド・ローゼン・国際ユダヤ協議会諸宗教会議会長らがスピーチし、国際協力や諸宗教対話の重要性などが指摘されました。
7日は、クラクフ旧市街の各所を会場に、アウシュビッツ、諸宗教と文化の対話、祈り、地域格差、信仰と科学など22のテーマ別にパネルディスカッションが展開されました。光祥次代会長は、クラクフ市庁舎で行われた『経済危機における人類の精神的追求』をテーマにした分科会にパネリストの一人として出席。「不安な時代こそ、神仏の教えに焦点を合わせたものの見方、考え方に、価値観を変化させるチャンス」との視座を示し、仏教の布施の精神とそれに基づいた本会の「一食(いちじき)を捧(ささ)げる運動」を紹介しながら、宗教者の祈りと行動の大切さを語りました。
8日午前、集いの参加者はオシフィエンチム市郊外のアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所を訪問。居住区やガス室などを訪れ、ナチス・ドイツによる人種差別政策、当時の様子などについて説明を受けました。ビルケナウでは、線路に沿って祈りの行進を行った後、ナチ・ファシズム被害者の国際慰霊碑の前で追悼式典。席上、収容所の生存者二人が、当時を回顧しながら、和解と平和への歩みの大切さをアピールしました。
同日夕には、旧市街の各会場で宗教別の「平和の祈り」が捧げられたあと、閉会式会場のマーケット広場に向かって全員が平和行進。閉会式では、主催者あいさつ、キャンドルへの献灯などが行われ、「神の名によって戦争を語ることは冒瀆(ぼうとく)」「対話が恐怖と不信から私たちを解放する」とのメッセージが込められた「平和宣言」が発表されました。
(2009.9.18記載)